Value Expressのシミュレーションサービスでは、各種パラメータの数値を変動させること(シナリオ設定)により、収益予測や、それを基に算出される価値をシミュレーションすることが可能です。
シミュレーションサービスのパラメータには、売上高伸び率、売上原価率、売上高販管費率、売上高運転資本増加率、設備投資(売上高は「伸び率」だけでなく、絶対額での入力も可能)、および営業外収益、営業外費用、評価対象、割引率、永続成長率の合計10種類があります。
売上高伸び率から売上高運転資本増加率までのパラメータには、「業界平均」「自社過去平均」、「自社最新期」、「任意設定」の選択肢があります(決算書が1期分しか収録されていない場合は、使用できない選択肢があります。売上高のみ「任意設定」が、「任意設定(率入力)」と「任意設定(金額入力)」の2種類あります)。設備投資には「減価償却方式」、「固定資産方式」、「任意設定」の選択肢があります。
営業外収益と営業外費用には「自社最新期」と「任意設定」が、評価対象には「自社評価」と「他社評価」があります。割引率と永続成長率は、「標準」(既設定値)と「設定」(自由入力)が選択できます。
各パラメータの「任意設定」や「設定」では、小数点以下2桁までの数値を自由に入力できます。なお、数値を自由入力する際に、売上原価率、売上高販管費率、設備投資、営業外収益、営業外費用、割引率、永続成長率は「−(マイナス)」の数値入力はできません。
@ 各種パラメータについて
(1)基本項目(基本シナリオ設定)
●売上高伸び率(%)=当期売上高/前期売上高×100−100
選択または入力された「売上高伸び率」は、6年目以降で永続成長率に収束するように設定されています。
(各年売上高伸び率算出例)
1年目売上高伸び率「10.8%」、永続成長率「0.8%」と入力
(10.8%−0.8%)÷5年=2%
結果
1年目売上高伸び率:10.8%、2年目同:8.8%、3年目同:6.8%、4年目同:4.8%、5年目同:2.8%、6年目以降:0.8%が継続
売上高は、将来5年間のそれぞれの年度を「絶対額」で入力することも可能です。その場合、6年目以降は永続成長率で推移すると設定されます。
●売上原価率(%)=売上原価/売上高×100
●売上高販管費率(%)=販管費/売上高×100
一部の企業に、売上原価と販売費および一般管理費の勘定科目の区別がなく、営業費用として計上されているものが存在します。その場合、営業費用を販売費および一般管理費とみなし、該当企業の過去平均値や最新期を計算しています。よって該当企業の過去平均売上原価率は、「0」または著しく低く算出されていることがあります。また過去平均売上高販管費率が、著しく高く算出されていることがあります。なお、「−(マイナス)」の数値入力はできません。
●売上高運転資本増加率(%)=(当期運転資本額−前期運転資本額)/当期売上高×100
売上高運転資本増加率は、5年目に「0」に収束するように設定されています。
(各年売上高運転資本増加率算出例)
1年目売上高運転資本増加率「4%」と仮定
4%÷4=1%
結果
1年目売上高運転資本増加率:4%、2年目同:3%、3年目同:2%、4年目同:1%、5年目同:0%
●設備投資
・過去の決算書上で設備投資の数値が計算上マイナスとなる場合(固定資産が減少している場合)は、評価結果画面では「−」で表示し、値は「0」として計算しています。
・フリーキャッシュフロー算出に必要な、将来の設備投資額を算出するための選択肢は、「減価償却方式」、「固定資産方式」、「任意設定」の3種類あります。「減価償却方式」は、過去最新期の減価償却費に係数を乗じたものを設備投資額とし、「固定資産方式」は、過去最新期の固定資産に係数を乗じたものと、減価償却費に係数を乗じたものを加算し設備投資額としています。
・過去最新期の販売および一般管理費の未収録等で、減価償却費が判明しない場合は、売上高に業種平均の売上高減価償却費率を乗じて算出した減価償却費を過去最新期の減価償却費と仮定しています(あくまで仮定であり実際の数値ではないため、過去最新期の決算書の減価償却費に表示はしていません)。これに前述の係数を乗じて設備投資額を算出しています。
※減価償却費について
・減価償却費はパラメータではありませんが、パラメータである「設備投資」に連動し、数値が自動決定されるようになっています。
・設備投資で「減価償却方式」を選択した場合の減価償却費は、設備投資額と同額に設定されます。また「固定資産方式」の場合の減価償却費は、「減価償却方式」の減価償却費と同額になります。
・「任意設定」の場合、以下の算式にて減価償却費を算出しています。
予測減価償却費=予測売上高×「任意設定」で入力した数値(売上高設備投資率)×設備投資減価償却費率(減価償却費/設備投資)の業界平均値
・企業単独財務ファイルは、製造原価明細書や販売費および一般管理費明細等が収録されていない企業もあり、そのため、減価償却費が不足しているケースがございます。
(2)営業外収益、営業外費用
営業外収益と営業外費用を絶対額で入力できます。選択または入力された各数値が、将来継続すると設定されます。なお、過去最新期の受取利息、および支払利息を下回る数値の入力や「−(マイナス)」の数値入力はできません。
(3)評価対象
「自社評価(関係会社含む)」と「他社評価」を選択できます。「他社評価」の場合は、マイノリティ(非支配権)ディスカウントとして、株式価値を10%ディスカウントしています。
(4)割引率
・割引率は、「標準」(既設定値)と「設定」(自由入力)が選択できます。「標準」では、加重平均資本コスト(WACC)を使用し、リスクフリーレートは1.8%に設定されています。
・「設定」(自由入力)では、永続成長率以下の入力はできません。
・「標準」である加重平均資本コストの設定は以下のとおりです。
・株主資本、および有利子負債ともに、価値算出の対象となる決算書の最新期時点での簿価を使用しています。
・公開企業で債務超過企業は、公開企業の業種平均資本構成にて割引率を算出しています。
・未公開企業で、債務超過企業および公開企業の業種平均資本構成より負債の比率が大きい企業は、公開企業の業種平均資本構成で割引率を算出しています。
・負債コストは、支払い利息と借入金や社債等の有利子負債額から算出しています。
・割引率、リスクフリーレート共に適宜変更いたします。変更する場合は、Value Express上でお知らせいたします。
・「設定」では、永続成長率以下の数値入力や、「−(マイナス)」の数値入力はできません。
・株主資本コストを算出する際のβ値は、株式会社東京証券取引所のTOPIXの指数値を使用、または加工し使用しています。
(注意)
β値は、株式会社東京証券取引所が算出・公表するTOPIXによるものであり、株式会社東京証券取引所からの使用許諾を得ずして使用してはならない。
1 TOPIX の指数値及びTOPIX の商標は、株式会社東京証券取引所(以下(株)東京証券取引所という)の知的財産であり、この指数の算出、指数値の公表、利用など株価指数に関するすべての権利およびTOPIX の商標に関するすべての権利は(株)東京証券取引所が有する。
2 (株)東京証券取引所は、TOPIX の指数値及びTOPIX の商標の使用に関して得られる結果並びに特定日のTOPIX の指数値について、何ら保証、言及をするものではない。
3 Value Expressは、(株)東京証券取引所により提供、保証又は販売されるものではない。
4 以上の項目に限らず、(株)東京証券取引所はValue Expressの提供に起因するいかなる損害に対しても、責任を有しない。
(5)永続成長率
・永続成長率は、6年目以降の売上高成長率を表すもので、設定された率が6年目以降から継続すると設定されます。また、選択または入力された売上高伸び率は、6年目以降で永続成長率に収束するように設定されています。
・永続成長率は、「標準」(期設定値)と「設定」(自由入力)が選択でき、「標準」は0.8%に設定されており、これは適宜変更し、変更する場合はValue Express上でお知らせいたします。なお「設定」では割引率以上の数値入力や、「−(マイナス)」の数値入力はできません。
A 帝国データバンク標準評価のパラメータ設定内容
各パラメータの数値を設定せずすぐに評価結果を閲覧したい方向けに、「帝国データバンク標準評価」が設定されています。「帝国データバンク標準評価」は、パラメータの数値が既に設定されているため、評価結果をすぐに閲覧することができます。
◎決算書が複数期収録されている場合の帝国データバンク標準評価のパラメータの数値設定内容
売上高伸び率:自社過去平均
売上原価率:自社過去平均
売上高販管費率:自社過去平均
売上高運転資本増加率:自社過去平均
設備投資:減価償却費方式
営業外収益:自社最新期
営業外費用:自社最新期
評価対象:自動判別
割引率:標準(加重平均資本コスト)
永続成長率:標準
◎決算書が1期分収録されている場合の帝国データバンク標準評価のパラメータの数値設定内容
売上高伸び率:業界平均
売上原価率:自社最新期
売上高販管費率:自社最新期
売上高運転資本増加率:業界平均
設備投資:減価償却費方式
評価対象:自動判別
営業外収益:自社最新期
営業外費用:自社最新期
評価対象:自動判別
割引率:標準(加重平均資本コスト)
永続成長率:標準
B パラメータの数値の制限
売上高伸び率、売上原価率、売上高販管費率、売上高運転資本増加率の各数値算出の際、スポットでの大幅な数値変動による企業価値への影響をなくすために、「任意設定」で自由に数値を入力する場合を除き、年度毎に以下のレンジを設けてその範囲内で算出しています。数値を制限した場合は、前提条件の該当指標に「上限下限調整後」という文字が表示されます。
(単位:%)
パラメータ |
売上高伸び率 |
売上原価率 |
売上高販管費率 |
売上高運転資本増加率 |
レンジ |
−50〜50 |
0〜200 |
0〜200 |
−50〜50 |